必要なのは1人になること、だった / 「ひとりぼっち」こそが最強の生存戦略である / 名越康文先生 / 【書評】

 

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皆さんこんにちは。

 

今回は、名越康文先生の

「ひとりぼっち」こそが最強の生存戦略である

という本を読みました。

そして内容を簡単にまとめてあります。

記事に目を通し、さらに深く内容を知りたくなった方は、本を手にとってみてください。

 

 

SOLO TIME (ソロタイム)「ひとりぼっち」こそが最強の生存戦略である

SOLO TIME (ソロタイム)「ひとりぼっち」こそが最強の生存戦略である

 

 

 

SNSの普及

もうこの子たち(SNS)がいない生活なんて

考えられないっ!

という方が多いのではないでしょうか。

わたし自身もSNSの沼にどっぷり浸かって日々過ごしています。

 

手間暇かけて情報取集するというわずらわしさは消え、おすすめやトレンドがお家でゴロゴロしながら見れちゃう。芸能人やインフルエンサーの行動や考えをリアルタイムで、知ることができる。世の中の傾向だって、画面をスクロールすればいくらだって見えてくる。

 

普通に生活をしていたら知ることもなかったであろう人の作品や考え。これらを見たり聞いたり、はたまた本人の生活をのぞくことさえできる。

 

場所や時間、そして経験値を選ばずに誰とでもつながることができます。私たちは、いつ・どこでも世の中とつながることが可能なツールを標準装備として手にしているのです。

 

 

あえて、1人になってみよう

そんな中で、「ひとりぼっちの時間を過ごそう」を推奨しているのがこの本になります。言わば、「人とのつながりから一旦開放されて、1人になってみよう!」ということになります。

ひとりの時間 = ソロタイム

 

ではなぜ、ソロタイムが必要なのか?

 

それは私たちが「周囲との人間関係」を何よりも大切に生きているからです。そして、その人間関係を維持していくために膨大なエネルギーを使っているということです。

 

例えば、こんなものがあります。

先生に褒められたい

上司によく思われたい

頼りになる先輩だと言われたい

あの子より可愛いと言ってもらいたい

恋人と喧嘩しないように

友人グループの輪を乱さぬように

このくらいやらないと認めてもらえない

空気の読めない奴だと思われたくない

・・・

 

挙げたらキリがありません。

あなたも普段何を思い他人と接しているか、一度考えてみてください。

 

日常でもSNSでもそうですが、私たちは自分が思っている以上に他人との関係のために身を削って繊細なコミニュケーションを日々取り合っています。そして、関係を維持するために他人からの評価にものすごく敏感になります。当たり前すぎて気が付かないかもしれませんが、それは自分をすごく疲れさせてしまっているかもしれません。

 

 

ひとりぼっちを勧める理由

それでもこんな声があると思います。

「人間関係を築くことは確かに、エネルギーがいるがその分人生が豊かになる。」

「人とのつながりは、プライベートでも仕事でもプラスにはたらくことが多い。」

それなのにわざわざ、ひとりぼっちの状況をつくることって意味がありますか? と。

 

確かに豊かな人生を送るうえで人間関係はかげがえのないものだと思います。

喜怒哀楽を分かちあえたり、仕事で切磋琢磨したり、憧れのあの人をひそかな目標にしてみたり。

 

ただしそれだけでは、他人ありきの人生でしかありません。自分は何者か、何を目指したいのか。しっかり軸を持っていなければ意味が無いと思います。

 

はっきりとした軸が無い人がいたとします。

するとたくさんの情報や人とのつながりを持っていたとしても、それらを活用することはなく、ただの受け身で終わってしまうでしょう。

 

自分自身の人生を歩むためには、たまに立ち止まり考える。そして、日ごろの人間関係を築いていく上で感じたストレスや疲れを癒す。

そんな時間が必要なのです。

 

 

世の中は「あうんの呼吸」だらけ

実際に社会や学校などの群れの中で生活していると「あうんの呼吸」が必要とされる場面にいくつも出くわします。

 

互いに空気を読み合うことが絶対条件。 

過剰すぎては、かえって空気の読めない奴だと思われてしまう。ほどほどに、でもタイミングは決して間違えてはいけない。

自分だけ突出しないように、多数派の意見になんとなく同意する。周囲と目配せしながら、輪を乱すものがいないか探り合いながら、みんな何かを察した顔で余計なことは言わない。

 

これってよくよく考えるとものすごく高度なテクニックだと思いませんか?

せまい群れの中だけの価値観や習慣を「言わなくてもこのくらい分かるよね?」 で片づけることが多すぎて正直少し疲れてきちゃいませんか。

 

「あうんの呼吸」はいい意味で使われることもありますし100%悪いものではないと思っています。

 

本文を引用させて頂くと

「それが当たり前のように求められてしまう社会は、多くの人を疲弊させてしまう可能性が高い」ということになります。

 

 だから、たまには群れを離れソロタイムを取り入れてみてはどうかという話に繋がるわけです。

 

 

自分のための時間

ここまで書いてきたように、私たちには自分のための時間が必要です。

人間関係や他人からの評価を気にしないで済む時間を意図的につくっていけたらベストです。それは別に些細な時間でも構いません。

 

この本でも「ソロタイム活用法」また「人生を変える習慣」としていくつか紹介されていますのでその中から気になったものを紹介したいと思います。

 

①丁寧に行うことで「行」となる

 わたしはこれを読んだときに、丁寧な暮らしに通ずるものがあると思いました。

本では「テーブルの拭き掃除をする」という例えで説明されていました。

 

ただ単に「テーブルが汚れているから拭き掃除をしよう」と思って掃除をしているのと、丁寧に心を込めて掃除をしたのでは同じ掃除だったとしても終わったあとの「すっきり感」が違います。

 

心を込めて拭くと「モノ」と「心」が一体化するような感覚が生じてくる。

このように身体とモノの感応を利用して心を落ち着けることを仏教では「行」(ぎょう)と呼ぶらしいです。

 

掃除だけに限りませんが、日常の動作を丁寧に行うことによって心を落ち着けることができ、自然と群れから離れた落ち着いた時間をつくることができます。

 

②朝は恰好のソロタイム

これは「朝活」などと呼ばれ、近年よく言われ続けてきましたね。逆にいろんな本で「朝が大事」という事実を目にしてなおさら、その信ぴょう性が高まってきました・・・。

 

心理学の観点から見ても、やはり朝はパフォーマンスが良いそうです。誰かと情報を交換して行うミーティングや勉強会ではなく、どちらかというとクリエイティブな時間に充てると効果的だということです。

 

③週に1回2時間よりも、毎日5分を続ける

これは「毎日行う」ということが大切になってきます。

ホメオスタシス(恒常心)」というものが関係してきます。これは、今の状態を維持しようとする働きのことです。

 

また新しい習慣が定着するまでの時間は、「2週間」と言われています。

「人生を変えるには2週間、それまでと違う1日を送ればいい」と書かれている通りでまずは2週間、自分と向き合いつつ継続していくことが大切です。

 

④月に1度の食事会

これは偶然にも私が実際にやっていた行動と重なり「これはやっぱり効果的だったのか~!」とうれしくなりました。

 

月に1度、誰と食事をするかというと「利害関係のない友人や師匠」です。言い換えると、あまり普段仕事やプライベートで一緒に過ごしていない友人や師匠ということになります。

なぜかというと、普段から顔を合わせている人だと「群れ」の雰囲気に染まりやすいからです。それではソロタイムとして意味が無くなってしまいます。

 

こういった方々と定期的に会うということは心の定点観測につながります。

「今、自分がどこに向かおうとしているか。」

「自分の状態は良いのか悪いのか。」

などを俯瞰的にとらえることができます。

 

私も仲の良い友人が2人いるのですが、普段は仕事やプライベートを優先させるという理由で特に連絡も取りません。

でも必ず月に1回は現状報告会と称して3人で食事をしています。

 

その時間は確かに、私が今考えていることや感じていることを聞いてもらい、率直な意見が聞けたりします。すると自分が今どこにいるのか、どんな位置でつまづいているのか、本当は何に悩んでいるのか、などが改めて見えてきます。

 

有意義な人生を送るために

つながる術であるSNSと、自分を見つめなおし癒すソロタイム。これらをメリハリつけて使い分けることができれば自分の人生の可能性を無限に広げることが可能ではないかと本気で思います。

 

ひとりぼっちで過ごすことに、寂しさや孤独を感じるうちはまだ群れへの依存が残っている証拠です。ひとりぼっちを楽しめてこそ、有意義な人生が歩めます。

 

この記事では「ひとりぼっちになるべし」という主張と理由や事実を簡単にまとめました。本の中にはさらに深く、また私たちの人生において大きなターニングポイントになるような言葉が多く書かれています。紹介しきれなかったライフスタイルの提案や、自身で人生を変えていくための具体的な方法などが詰まっています。

気になった方は、ぜひ読んでみてください・・・!

 

SOLO TIME (ソロタイム)「ひとりぼっち」こそが最強の生存戦略である

SOLO TIME (ソロタイム)「ひとりぼっち」こそが最強の生存戦略である

 

 

 

無意識から出た言葉でも、言われた方には刺さる

 

 

 

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今回の本は辻村深月さんの「噛み合わない会話と、ある過去について」

カラフルなデザインの可愛らしい表紙からは想像できない、人間の無意識の怖さをここまで痛感させる本は他にないと思います。

 

 

噛みあわない会話と、ある過去について

噛みあわない会話と、ある過去について

 

 

 

 

まずはさくっとあらすじを書いていきます

 

 

さくっとあらすじ

 

 

この本には短編集が4話分収録されています。その4話の登場人物や舞台は全てバラバラでありストーリー上の繋がりはありません。ですがそれぞれの話の進み方に共通点があります。

1つ目は過去を振り返る、2つ目は自分と相手の会話が噛み合わない、という2点です。

 

過去に何らかの関係があった人たちが久しぶりに再会して過去を振り返るという描写がほとんどの短編で出てきます。

その際に人によって過去に何があったか、捉え方が違います。言った方は何となく無意識に口から出てしまった言葉でも、言われた方はずっと時が経った今でも、鮮明に覚えている...という具合です。

両者の意識の違いで起こる不穏な空気感が読んでいる私たち読者にも伝わってきて、とてもハラハラしますが読み応えがあります。

 

 

 

 

無意識の行動

 

 

毎日を生活していると自分の行動は多岐に渡ります。その1つ1つをきちんと考えてから行うということが出来ていますか?

おそらく、きちんと考えて話す場面もあるでしょうが会話の半分くらいは「無意識」になっているのが現状です。

 

ということは相手の立場や状況を考えてる余地がないのだと思います。とにかくその場を荒波立てず過ごすために咄嗟に出たものですから。

 

それってすごい怖いことですよね。知らない間に相手に不快な思いをさせてしまってるかもしれない。

 

私はこう思っていたけど、相手にとってはそうじゃなかった。

私はこう言われたと思っていたけど、相手は覚えていなかった。

 

言った、言わない

した、してない

された、されてない

可愛そうだと思ってた、下に見られてた

優しくしてあげたつもりだった、バカにされてた

 

このように自分対相手では同じ行動を前にしても捉え方が全く異なる可能性があるのです。

 

 

 

 

人間の格付け

 

 

個人的にはこの本を読んで、最も怖いと感じた部分です。

 

社会人の方でも学生時代を思い出してみてください。学校という狭い世界の中では、教室での振る舞いがいかに重要になってきます。キャラクターが様々な10代の中では、優勢・劣勢を決めがちです。

自分の中であの人は私よりも上、下というような扱いを勝手に決めつけてしまう人もいます。

 

上下だけじゃなくても、勝手な決めつけは他にもあります。例えば、あの人には少々酷いことを言っても面白おかしくしてくれるから問題ない、など。その場の雰囲気では笑うしかなかったけれど本当にその人は傷ついてはいないのでしょうか。

 

色んなパターンがあると思いますが、決めつけによって行動は変わります。自分と対等だと思っている人への態度と下に見ている人とでの対応は同じ訳がありません。しかもそれを悪いと思わないんですね。何故ならそれは「無意識」でやっていることなので悪気がないから。

周りがそういう雰囲気を作っていただけで、別に傷つけようとしてた訳じゃないから。

 

 

まとめ

 

 

この本ではそんな無意識より出た言葉や行動によって翻弄されていく人たちの過去と今を描いた物語が綴られています。

 

無意識なのだからどうしたらやめられるかなんて分からないし、でもそれを言ってるといじめや人を傷つけることを擁護してることになるのか?ってなるし難しすぎる題材。

つまりどちらの登場人物の立場にも感情移入してしまえる本なのです。

 

リアリティがある会話ばかりで夢中になってしまう場面ばかりです。気になる方はぜひ読んでみてください。

 

 

 

噛みあわない会話と、ある過去について

噛みあわない会話と、ある過去について

 

 

 

【書評】くまのプーさんと呼ばれるウィニー・ザ・プーの魅力

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とあるクリスマス・イヴの日に

ウィニー・ザ・プーがこの世に誕生したのは、今からずっと前のクリスマス・イヴのことです。とあるイギリスの新聞のクリスマス特集号に作家のA・A・ミルンAlan Alexander Milne)の手によって短編小説としてデビューし、時を超えて今でも多くの人々に愛され続けています。

 

日本でもいくつかのプーの本が出版されていますが、今回私が手に取ったのは阿川佐和子さん訳のタイトル「ウィニー・ザ・プー」です。この本は10章の短編集から成り立っています。いちばん始めの第1章が「ウィニー・ザ・プーとミツバチが登場。さて、お話は始まります。」となっており、これこそがあのクリスマス・イブの日にプーがこの世に初めてお披露目された物語です。

 

ウィニー・ザ・プー (新潮文庫)

ウィニー・ザ・プー (新潮文庫)

 

 

この本の中身をちょこっと紹介しつつ、プーさんの魅力について少しだけ語ります。今回の文章を読み終えたとき、プーのことが今よりもほんの少しだけ気になる存在となっていることかと思います。

 

 

キャラクターたちのモデル

作者のミルンには妻と一人の息子がいます。ミルンは家族とともにロンドンの自宅とイースト・サセックス州ハートフィールドの別荘を行ったり来たりして暮らしていました。その別荘の近くに広がるアッシュダウンの森がプーの物語の舞台となっているようです。

そしてもうお分かりでしょう、一人息子がクリストファー・ロビンです。実の息子を実名で物語に登場させたということになります。そしてそのクリストファー・ロビンの一歳の誕生日に、母のダフネが百貨店で買ってきたくまのぬいぐるみがプーのモデルとなっています。

 

プー以外にもコプタン(ピグレット)やルー、イーヨーなどのモデルとなるぬいぐるみたちがいます。うさぎ(ラビット)とフクロン(オウル)だけは実在のぬいぐるみはなく作者が創造する世界のなかで誕生したものだといいます。

 

プーやコプタンのモデルとなった実在のぬいぐるみたちは、アメリカ各地のイベントや学校に登場したり、イギリスを訪問したりしながら現在はニューヨークの私立図書館のガラスケースに展示されているそうです。ルーだけは途中行方不明になったみたいですが・・・。(これを読んだとき、ニューヨークに行きたい理由がまた1つ増えてしまったと思った。)

 

 

プー独自の思考と世界観

プーの考えはとても単純で素直です。でもきちんと理由付けして考えます。これはこうだから、こうなる。だから自分はこうしよう。

例えば最初のハチミツを取りに行く話の中にプーのこんなひとりごとがあります。

 

「なぜ世の中にミツバチが存在するかといえば、つまりそれは、ハチミツをこしらえてるために決まってる」

プーは立ち上がり、

「そいでもってなぜ、ミツバチがハチミツを作るかといえばだ。その理由はつまり、僕が食べるためなんだ。そうとしか考えられないよ」

 

このときのプーの考えはおそらく「ハチミツが食べたい」です。

自分の直接的な思いを言葉にしているわけではありません。しかしこのクマさんはこんなにもハチミツを求めている、とこちらに考えさせてしまうのはすごいことだと思います。プーは頭をフル回転させて考え言葉を選んでいるのです。そして次の一手を選択する理由を第三者目線で考えます。そして必ずプーは行動にうつします。

 

ここが物語にはまるポイントのひとつかなと思っています。

プーだけではなくこの世界の住人たちはみな哲学的です。思考の切り口はややこしいのですが、難しいことは1つも言っていないので誰が読んでもすぐに理解できます。思いがより素直な形でストレートに入ってきます。そこは卑しさとは全くの無縁な世界です。

 

この他にもプーが自分自身に問いかける場面がたくさんあります。


例えばこんな感じです。

 

「それはちょうど僕は自分に問いかけてたとこ。僕は何を追跡しているんだ?」(プー)

とあるものをコプタンとともに追跡しているときに、言った一言です。しかも言い出しっぺはプーの方です。もはや物語の趣旨から外れかねない言葉ですが、読んでいる私たちは「忘れたんかい、このクマさんは(笑)」と心でつぶやきながらもプーってかわいいなあと思ってしまうのです。

 

 

プーのアイデンティティと仲間への愛情

こんな一言もあります。

「頭のいい人も、そんなに頭のよくない人もいる、世の中はそんなもんさ。」(プー)

これは物語の前の”はじめに”にあたる部分で出てくる言葉です。世の中を語るプーに少し違和感もありますが、プーはぜんぜん気にしないのです、そんなこと。細かいことを気にしないというのは物語の中の最大の癒しであると思います。

もっと大事なことが他にあるでしょう?とプーが教えてくれてるような気がしてなりません。

 

プーの物語を通して、忘れていた大事な”かけら”を拾い集めるような作業ができます。作業というのはもちろん比喩的な意味合いですが、それはとてもゆっくり自分自身と向き合える丁寧な時間であることだけは確かです。

 

 

 

目先のものはもちろん大事ですが、一番は自分を大事にしなくてはいけません。

自分を大事に出来て、初めて仲間にも愛情を注ぐことができているのだとプーをみていると感じます。

 

 

 

またイーヨーが誕生日を一人寂しく迎えている際の、プーの気持ちを語った言葉が次です。

「プーは何か救いになるようなことを言わなければいけないと思ったものの、気の利いた言葉が何も思い浮かびませんでした。そこで、何か言うかわりに、救いになることをしようと心に決めました。」(語り手)

誰かのために何かをしてあげたい、という気持ちが自然と浮かぶのは愛情じゃないかと思うのです。このあとプーは仲間を巻き込んで行動に出ます。実はこの話、個人的には少しうるっときてしまう話でした。あまり詳しい内容はここで話すのはアレなので気になる方は読んでみてください・・・。

 

 

会話中心の物語と目に浮かぶ描写

プーの物語は会話中心で進んでいきます。会話の中には登場人物たちが冗談を言い合ってやり取りそのものを楽しんでいる様子もあります。そこが何とも彼ら彼女らへの愛おしさが増してくるところでもあるのです。また、駄洒落もちらほら出てきます。ですので訳をされる方によってどのように言い回しが変わるのだろう、と読み比べしてみたくなります。

 

会話の他に森の生活を浮かばせる、ほのぼのとした描写も多くあります。その中でも私が一番気に入っているのがクリストファー・ロビンが長靴を履くのをプーが手伝うという場面です。

 

「ハロー、くまのプー。長靴がはけないんだ。」

「それはそれは」

「よかったら僕の背中に寄りかかってくれるとありがたいんだけど。そしたら僕、長靴をひっぱり上げるとき、後ろへひっくり返らずにすむでしょ」

プーは座り込みました。両足を地面にめりこませ、クリストファー・ロビンの背中に力いっぱいに寄りかかりながら。いっぽうクリストファー・ロビンはプーの背中に力いっぱい寄りかかりながら、長靴を引っ張って引っ張って引っ張ったら、ようやく足に入りました。

 

これを読んでいるときに、踏ん張るプーとクリストファー・ロビンが目の前にいるような感覚になりました。それくらいリアルに想像でき、自然とプーの世界に入り込めるようになっているのです。

 

 

 

世界一有名なクマのこと

プーはきっと世界一有名なクマですがまだまだ知らない一面の多さに驚きました。一言では語りつくせない魅力がきっと多くあるのだろうと思います。途中には哲学的という言葉も出しましたが、近所の本屋の隅っこでこんな本を見つけたので「読みたいリスト」の仲間入りをしておきました。

新装版 クマのプーさんの哲学

新装版 クマのプーさんの哲学

 

 

本屋で見つけたのは新装版でしたがこちらもあるみたいです。

 

クマのプーさんの哲学

クマのプーさんの哲学

 

 

 

また作者のA・A・ミルンの伝記や息子のC・R・ミルンの自伝など日本語で読めるものも多数あるみたいですのでそちらも気になっています。

クリストファー・ロビンはその後、第二次世界大戦の際に陸軍工兵隊に入隊、終戦後は復学し一時期は作家を目指す。しかし上手くいかずに本屋を営むなどをするが再び著者の道へと踏み出しいくつか本を書き上げている。これだけでも十分に気になる内容であることに違いないと思います。)

 

 また今回の表紙を手掛けている「100%ORANGE」さん。

この方のイラストがとても好きなのでそれはそれで別の機会に魅力について語りたいと思います。

 

 プーの本はいくつかありますが、まず初めにプーのことを知りたいという方はこの本を手に取ってみてはいかがでしょうか。プーの世界はいつでも私たちを迎え入れてくれるはずです。 

 

 

ウィニー・ザ・プー (新潮文庫)

ウィニー・ザ・プー (新潮文庫)

 

 

 

【書評】だれかに話したくなる「小ネタ」が散らばっている / アウトプット大全(樺沢紫苑)

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結果を手に入れる、そんな人生誰だって欲しい

 

 

今回、紹介させて頂く本は

「学びを結果に変える アウトプット大全」

(樺沢紫苑)

 

 

学びを結果に変えるアウトプット大全 (Sanctuary books)

学びを結果に変えるアウトプット大全 (Sanctuary books)

 

 

 

どんなことが書いてある本なのか

まずはさくっと要約から。

 

 

 

 

 

 

1分で分かる「アウトプット大全」

 人は誰しも、結果(成果)を出したいと思っています。

そのために本を読んだり、セミナーや

講習に行ったりして自分が今まで知らなかった情報をインプットします。

(勉強をするという言い方がしっくりくるかもしれません。)

 

しかし、それだけで結果に繋がることはありませんよね。

そうです、インプットした情報は実際に「使う」ことをしないとただ忘れていくだけなのです。

 

その情報を「使う」ことこそが「アウトプット」

実際に情報を「使う」ことで、脳は得た情報を

「重要な情報」へと切り替えます。

 

「重要な情報」にならなかった情報は記憶に残らず、忘れます。

つまり無かったことになります。

それはインプットのために割いた時間やお金がただの無駄になるということです。

 

それでは勿体ないですよね。

だから、インプットしたらアウトプットするという習慣をつけましょうね

というのがこの本の主旨となります。

 

 

 

 

そもそも「アウトプット」って何をするの?

 

 なんだか難しいことをする感じだと思ってました、私も。

実際は本当に簡単ですぐに実践出来そうなものも多いです。

整理してみると・・・

 

 

インプット:脳の中に情報を入れる、つまり入力する。

「読む」「聞く」

本を読んだり、セミナーに参加したりすることですね。

 

それに対して

 

アウトプット:脳の中に入ってきた情報を処理し、外界に出力する。

「話す」「書く」「行動する」

本の感想を誰かに話す、日記やブログを書く、気になる人に会いにいく、など。

 

例えば、本を読んだとします。

本を読むはインプットです。

面白いと感じたり、心に響くような

内容であれば友人や家族におすすめしたりしませんか。

その時に何でおすすめしたいのか、ということを考えながら「話す」ということをすると思います。(これはアウトプットですね。)

そうすることで自分の脳の中に、記憶としてその本の内容が残るのです。

 

 

ちょっと待って!こんなの普通ことじゃない? と

あなたは思いましたか。

 

そうなのです、普通のことなのです。それも超普通です。

 

この本でいうアウトプットって何か目新しいことをするのではなく

誰しもがやり方を知っている、やったことがある、そんな内容ばかりなのです。

(たとえばTodoリストを作成する・・・など)

 

 

そこで1つ考えてみましょう。

この普通を休まずに継続してこれた人はどの程度いるでしょうか。

 

 

そうなると少し考えてしまいませんか。

 

 

 

アウトプットって簡単に出来ることだ、

ということは分かって頂けましたよね。

この本では、具体例とともに様々な視点から

「話す」「書く」「行動する」について考えることができます。

 

 目新しい内容が書いてあるというよりは

普通にやってきたことの重要性を再認識させてくれる、という感じです。

 

この本を読むと、アウトプットに対するハードルが低くなると思います。

「なんだ、これくらいなら出来そうだ!」

この気持ちが大事です。

そう感じることが出来れば、あとは継続しやすくなります。

その継続が自己成長に繫がり、結果に結び付くのだと思います。

 

 

そして次からは

本を読んで「なるほどな~(しみじみ)」と印象に残った部分について書いていきます。

さくっと読んで頂くために4つに絞りました。

 

読みながらリアルタイムで感想をメモしている

Twitterのつぶやきを張り付けているので一緒に見てみてください。

(本が好きなひとはフォローしてくれたらうれしいな…)

 

 

 

 

1_「高すぎる目標」は逆効果?

 

 

ドーパミンは、簡単すぎない、難しすぎない

一生懸命頑張れば何とか実現できそうな目標を設定したときに最も分泌されるそうです。

 

この「簡単すぎない、難しすぎない」を

樺沢先生は「ちょい難」と名付けていらっしゃいます。

 

 実際に私は、日記を書き続ける!と

人生で決めたことがおそらく10回近くはあるのですが、言葉通り3日坊主で終わってしまったことが何度もあり、一番続いたので6日間でした。

 

その時は、日記用の立派なノートを1冊用意して

1日1ページ、食べたものと会った人、会話で印象に残ったことは必ず書く!と意気込んでいました。

実際はこれまで何も書いてこなかったのに、1ページなんて書けるはずもなく

日が経つにつれ、やる気はどこへやら。

だんだん面倒だなと思うようになってしまいました・・・。

 

この本を読み、継続のためには

身の丈に合った目標からクリアしていく

ということを学びました。

そこで、「普段使っている手帳になんでもいいから1行は書く」に条件を変えました。(急に雑すぎる)

そう、ハードルを一気に下げたのです。

 

このやり方を初めて、新年の1月1日から現在までの約1か月近く、順調に日記は継続しております。

(しかも今は10行以上は書いていますし、起床時間やご飯など色々書くようになりました)

他からみたら微々たる変化というかレベル低すぎやろ、という感じだと思いますが私にとっては大きな成長です。

 

最終目標はもちろんあるべきだと思いますが

それに向けての通過点(目標)をいくつも用意し、確実に1つずつクリアしていければ

何より継続できている自分に少しずつ自信もつきます。

 

 

 

 

2_言葉で表現し脳の棚卸をする

 

 人に見せる前提で書くものは、棚卸にならないと思います。

私の場合は本を読んだり、SNSを見たりと、日頃からインプットの量がアウトプットに比べてとても多いです。(反省点でもあります)

 

現代社会では私のような人(仲間)が多いのではないでしょうか。

 

心動かされる文章やときめくイラストや写真、とびきりのアイデアはすべて突然やってきます。(書きながら浮かぶということもあるかもしれません)

出会ったとき、その瞬間に捉えておかなくては自分からはすぐに消えてなくなってしまうのです。

 

だから情報を整理する、いわば自分の頭の中の引き出しを整理整頓しておく、みたいな

時間が必要不可欠なのだと思います。

 

寝る前にホットミルクを飲みながら

好きな音楽を聴きながら自室で

休日に好きなカフェでなど

 

シチュエーションは様々ですが、この時間は私にとって毎日の多大な情報を整理し、これからに向けてのやる気を育み、同時にリラックスする時間です。これからも大事にしていきたいと思いました。

 

 

 

 

3_とりあえず「完成」させることが最優先

 

 

とりあえず完成の最大の理由は「直し」「ブラッシュアップ」の時間を確保するということです。

最初から100点を目指すと完成まで時間がかかります。

完成したとしてもそれが60点の評価を得たら、残り少ない時間で100点まで持っていく事は大変だと思います。

 

点数をつけるのは、必ず自分以外の他者です。

だから100点を目指すには他者の意見を踏まえたブラッシュアップの時間がとても重要になるのだと再確認しました。

 

実際に私もこれを意識するようになってから仕事が早くなったね、と

褒めてもらうことが増えました。

 

いち早く完成し、他者(私の仕事の場合は上司)にチェックしてもらいます。

すると間違いや思い違いがあった場合には手遅れになる前に

つまり早い段階で軌道修正ができます。

 

また、自分では考えつかなかったようなアイデアを聞くこともできて作成途中のものに反映させることもできます。

 

そうして結果的に

完成物として良いもの(100点に限りなく近いもの)にしていきます。

 

 

 

 

4_インプットとアウトプットの黄金比は3:7

 

実際にほとんどの方が理想の真逆である7:3であるそうです。 

私はこの話を読み、学生時代の試験勉強を思い出しました。

 

教科書や授業で書いたノートを読む

「覚える時間(インプット)」

実際に問題を解く

「練習する時間(アウトプット)」

 

私は圧倒的に

インプット:アウトプット=7:3

でやっていました(完全に逆!!!!)

 

内容覚えないと問題解けないでしょ~っていう

真面目さが裏目に出まくった結果です。

試験の成績は言うまでもなく、高校に進学してガクッと落ちていきました。

 

中学くらいのころまでは簡単なので問題解かなくても内容が頭に入りますが

高校以上になると内容が複雑になってきて同じ勉強方法では全く通用しませんでした・・・。

 

これは完全にインプットした情報をアウトプット「使う」ことをしなかったために

覚えたと思い込んでいる情報が、記憶から消えていくという現象がまさに私の頭の中で起こっていたのです。(恐ろしい)

 

 

 

 

 ちょいと小ネタ持ちになれる本

 

 この本の良いところは、

自分の場合は・・・?というように当てはめやすいところです。

スラスラ読めてトントン考えられるから読み終えたあとも気持ちいいです。

「インプットとアウトプットの黄金比=3:7」のように誰かに話しやすい内容なのでちょっとした小ネタとして、友人や家族、上司や仕事仲間なんかと色んな話ができそうです。

 

きっと人によって性格や生活リズムも異なるので「なるほどな~」と感じるポイントが様々でおもしろいと思います。

 

また、その人独自のアウトプット・インプットのやり方が見えてくるかもしれません。

いつもとは少し違う目線で話ができるきっかけにもなりそうです。

 

気になる人はぜひ読んでみてください。

 

学びを結果に変えるアウトプット大全 (Sanctuary books)

学びを結果に変えるアウトプット大全 (Sanctuary books)