無意識から出た言葉でも、言われた方には刺さる

 

 

 

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今回の本は辻村深月さんの「噛み合わない会話と、ある過去について」

カラフルなデザインの可愛らしい表紙からは想像できない、人間の無意識の怖さをここまで痛感させる本は他にないと思います。

 

 

噛みあわない会話と、ある過去について

噛みあわない会話と、ある過去について

 

 

 

 

まずはさくっとあらすじを書いていきます

 

 

さくっとあらすじ

 

 

この本には短編集が4話分収録されています。その4話の登場人物や舞台は全てバラバラでありストーリー上の繋がりはありません。ですがそれぞれの話の進み方に共通点があります。

1つ目は過去を振り返る、2つ目は自分と相手の会話が噛み合わない、という2点です。

 

過去に何らかの関係があった人たちが久しぶりに再会して過去を振り返るという描写がほとんどの短編で出てきます。

その際に人によって過去に何があったか、捉え方が違います。言った方は何となく無意識に口から出てしまった言葉でも、言われた方はずっと時が経った今でも、鮮明に覚えている...という具合です。

両者の意識の違いで起こる不穏な空気感が読んでいる私たち読者にも伝わってきて、とてもハラハラしますが読み応えがあります。

 

 

 

 

無意識の行動

 

 

毎日を生活していると自分の行動は多岐に渡ります。その1つ1つをきちんと考えてから行うということが出来ていますか?

おそらく、きちんと考えて話す場面もあるでしょうが会話の半分くらいは「無意識」になっているのが現状です。

 

ということは相手の立場や状況を考えてる余地がないのだと思います。とにかくその場を荒波立てず過ごすために咄嗟に出たものですから。

 

それってすごい怖いことですよね。知らない間に相手に不快な思いをさせてしまってるかもしれない。

 

私はこう思っていたけど、相手にとってはそうじゃなかった。

私はこう言われたと思っていたけど、相手は覚えていなかった。

 

言った、言わない

した、してない

された、されてない

可愛そうだと思ってた、下に見られてた

優しくしてあげたつもりだった、バカにされてた

 

このように自分対相手では同じ行動を前にしても捉え方が全く異なる可能性があるのです。

 

 

 

 

人間の格付け

 

 

個人的にはこの本を読んで、最も怖いと感じた部分です。

 

社会人の方でも学生時代を思い出してみてください。学校という狭い世界の中では、教室での振る舞いがいかに重要になってきます。キャラクターが様々な10代の中では、優勢・劣勢を決めがちです。

自分の中であの人は私よりも上、下というような扱いを勝手に決めつけてしまう人もいます。

 

上下だけじゃなくても、勝手な決めつけは他にもあります。例えば、あの人には少々酷いことを言っても面白おかしくしてくれるから問題ない、など。その場の雰囲気では笑うしかなかったけれど本当にその人は傷ついてはいないのでしょうか。

 

色んなパターンがあると思いますが、決めつけによって行動は変わります。自分と対等だと思っている人への態度と下に見ている人とでの対応は同じ訳がありません。しかもそれを悪いと思わないんですね。何故ならそれは「無意識」でやっていることなので悪気がないから。

周りがそういう雰囲気を作っていただけで、別に傷つけようとしてた訳じゃないから。

 

 

まとめ

 

 

この本ではそんな無意識より出た言葉や行動によって翻弄されていく人たちの過去と今を描いた物語が綴られています。

 

無意識なのだからどうしたらやめられるかなんて分からないし、でもそれを言ってるといじめや人を傷つけることを擁護してることになるのか?ってなるし難しすぎる題材。

つまりどちらの登場人物の立場にも感情移入してしまえる本なのです。

 

リアリティがある会話ばかりで夢中になってしまう場面ばかりです。気になる方はぜひ読んでみてください。

 

 

 

噛みあわない会話と、ある過去について

噛みあわない会話と、ある過去について